2016年8月14日日曜日
ソロモンの偽証 宮部みゆき ※ネタバレ注意
あらすじ(Amazonより)
クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。彼の死を悼む声は小さかった。けど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そして、その悪意ある風評は、目撃者を名乗る、匿名の告発状を産み落とした―。新たな殺人計画。マスコミの過剰な報道。狂おしい嫉妬による異常行動。そして犠牲者が一人、また一人。学校は汚された。ことごとく無力な大人たちにはもう、任せておけない。学校に仕掛けられた史上最強のミステリー。
映画の番宣されてた時から気になっていたのに、
読み終わってみれば金曜ロードショーの放送すら終わってた…。録画はまだ手付かず。
久し振りの読書だったけど、すごく面白かった。
分厚いハードが上中下とあったけど、相変わらずスイスイ読める文章。
取りあえず出てくるキャラクターが皆、個性的で面白い奴ばっか。
ただ、中学生に限ってはクローズアップされるキャラの外見が、おおむね
容姿端麗・肥満児・三宅樹里の3種類のどれかに該当してた。
メガネだのノッポだのに関しては、主観で語る場面も短く掘り下げも少ないキャラだったので、
読んでる側としては、なんかもう世界が容姿端麗・肥満児・三宅樹里の3つに分かれてるんじゃないかという錯覚が。
余談ですが、個人的に、女子に騒がれる男キャラの外見で「女みたいな外見の男」って表現、イメージしづらい。
そもそもパッと見で男と分かる顔は、中性的ではないと思うので。
漫画のキャラ絵では可能だけど、現実で、男か女か分からないくらい中性的な顔なんて、ばっちりメイクのビジュアル系バンドか、昔のKAT-TUN上田くらいだよ(※見識狭い人の意見)。
まず、主人公の藤野涼子。高木先生や小賢しい記者茂木に対して啖呵きったりと、
根暗ウジウジや、勘違いマックスなキャラが跋扈する中で、痛快にズバッとやってくれる涼子さんは魅力的でした。
まぁ、クラスの中心的なキャラという位置づけにしては、彼女の思考も、「森口三宅嫌いまりちゃん微妙」とか暗いものが多かった。
それでもやはり、特に引き込まれるシーンを作り出していたのは彼女でした。
もう一人の主人公が野田健一。なのかな?
本では女みたいな外見と表現されていたのに、映画のキャストがまえだまえだ兄と聞いて、
尺の都合上、向坂行夫と合体させられてオリジナルキャラになったのかと思いました。
今調べてみたら違うなぁ。違うんかい。
大人しいキャラと思いきや、話が進むと、お母さんを殺そうとして泣き叫んだり、神原に酷いことを言った大出に激怒したり、騒がしくなっていきます。
正直あんまり好きじゃなかったなぁ…このキャラ。
神原に何をしてもらったわけでもないのに、神原神原なんですよこの人。
自分のことを本気で心配して殺人を止めてくれた向坂に対する感謝はサラッとしてたからな。
結局、神原がイケメンで皆から一目置かれる存在だから、そんなに必死になれるんでしょ、って思わされます。なんか思い出のマーニーの主人公思い出した。デブには厳しいのよ。
それでも親との関係改善や、最後に法廷で神原の為に発言して、周囲を唖然とさせるくらいに成長したのは良かったです。
そして弁護人の神原。母親が父親に殺され、その後父親も自殺したという、
不幸な過去を持つ、頭の良い美少年です。ブレイブストーリーにも出てただろ君。
まぁ、メインキャラについて色々述べましたが、
サイドキャラのほうが好感がもて、掛け合いも面白かったです(オチ)。
ストーリーとしては、序盤は登場人物の心理描写を詳しく掘り下げながら状況説明。
どんどん事件も起こり、気持ちが入り込んでいきます。
心理描写が濃厚です。柏木卓也が中二病全開でイライラします。左手うずき過ぎて頭おかしくなったんちゃうんかコイツ。
それに比べると、後半・解決の仕方は本当にあっさりでした。
重要な核心に触れる証言をしてくれる人は、もちろん最後のほうに出てくるわけですが、
それがもう、受動的に待ってれば、勝手に出てきてくれるんですよね、空を見上げてれば勝手に美少女が降ってくるみたいな。
電器屋のおっさんは降って来て欲しくなかったなぁ。
本当に決定的な証人なので、主人公が小さな糸口から能動的にたどり着く、くらいの盛り上がりはあって欲しかったです。前半で能動的に裁判の権利を勝ち取ったみたいに。
また、三宅樹里の心境の変化ももう少し詳細を知りたかった。
なんせ、ネガティブな独白に何ページも読者を付き合わせたんですから、
最後本当に成長した彼女の姿が、別の人間の視点からサラッと描かれるだけなんて物足りない。
それも、彼女を救うのは、ほとんど接点のなかった神原です。なんで彼女のために散々やってきた涼子さんではないんですか現実って厳しい。
けれど、三宅樹里を救ったやり方、神原が法廷で大出を声高に糾弾するシーンはシビれました。
今まで、大出と神原は仲間で、神原が大出を上手く手なずけている描写もあったので、
大出の悪事に関してなぁなぁになっても不思議じゃなかったし、読んでる身としてはその辺りちょっと忘れかけてました。
そこで神原が唐突に、痛烈に大出を批判したときは、衝撃的で心が躍りました。
弁護という趣旨はずれないし、頭の良いやり方だ。
裁判の戦いに関しても、神原と涼子さんの頭の良さが、面白い掛け合いを生み出しておりました。
ラストは野田健一の20年後の姿で締められます。
野田なんてどうでもいいよ涼子を出せーと思っていたら、
どうも文庫本には、涼子さんの20年後の話があるらしいじゃん。読もう。
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